長年能の世界で生きてこられた今村さんですが、すべてが順風満帆ではありませんでした。
一時は能をやめてしまおうと思われたこともあったそうです。「そのとき子育てもしておりましたし、車の免許も持たず、稽古場までバスで片道2時間かけて通っておりましたから」と今村さん。でもそのとき救いの手を差し伸べてくださったのが、この能教室のオーナーであり、35年にわたる生徒さんでもある堤さんでした。「自宅まで何度も何度もきてくださって、今ここでやめたらだめですよと説得されたときには、ありがたくて涙が出る思いでした」と今村さん。
そして50歳のときには大病で入院されたことも。「しかし、その回復には、能で鍛えた精神力が役に立たように思います。能をする人には、長寿の方が多と言われています。能の先生方もそうですが、この教室にいらっしゃる堤さん(85歳)、田中さん(82歳)ともに80歳を超えても、とてもお元気にされています」。
大きな声を出してお謡いを唄うことは、よいストレスの発散になるのではないかと今村さんはいいます。お里のお母様も長年能をされていたという田中さんは「私の母も、実際に90を超え亡くなるまで能をしていましたから、長生きというのは本当だと思います。私もできるところまで、続けていきたいと思っています。」と語ってくださいました。 |